熊本地震で応需した災害用処方箋の疑義照会分析
学会
2017年7月8日
この演題は、一般演題(口頭)のうち優れた演題である「一般演題(厳選)」として採用されました。
大会名 | 第20回日本医薬品情報学会総会・学術大会 |
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会期 | 2017年7月8日・7月9日 |
会場 | 慶應義塾大学薬学部 |
演題名 | 熊本地震で応需した災害用処方箋の疑義照会分析 |
発表形式 | 口頭発表 |
著者名 | 穴見 江梨子、坂本 豊伸、尾脇 まり子、熊野御堂 悠、德山 智治、塚本 賢児、天方 奉子、稲葉 一郎、今里 泰、木戸 宏幸、湯川 栄二 |
目的 | 熊本県阿蘇郡南阿蘇村は、平成28年4月14日と16日に発生した熊本地震により主要道路が分断され、さらに村内唯一の基幹病院が閉鎖となり、一時的に入院、外来受診が困難な状況に陥った。そのため村内の各避難所では仮設診療所などが設置され、約1ヶ月にわたり医療支援が行われた。その中で災害用処方箋が発行され、多くはモバイルファーマシーや臨時調剤所で応需されたが、一部を当薬局で応需した。多くの処方箋に疑義照会を行ったため、その疑義照会内容を分析した。 |
方法 | 熊本地震発生直後から5月下旬に医療支援チームが解散するまでに、当薬局で応需したすべての災害用処方箋について疑義照会件数を調べ、さらに疑義照会内容を「①用法・用量不備 ②薬品名不備 ③日数不備 ④同種同効薬変更 ⑤薬学的疑義 ⑥その他」の項目に分類・集計した。 |
結果 | 災害用処方箋の応需期間は4月20日から5月28日、応需枚数は129枚、そのうち疑義照会を行ったのは96枚、疑義照会件数は158件となった。内容別では①用法・用量不備88件、②薬品名不備22件、③日数不備8件、④同種同効薬変更10件、⑤薬学的疑義24件、⑥その他6件となった。災害用処方箋は、7日分までの処方が原則であったため、長期処方は日数不備として疑義照会を行った。 |
考察 | 応需した災害用処方箋の約4分の3が疑義照会の対象となった。その内容で最も多かったのは用法・用量不備(55.7%)によるものだった。災害用処方箋は手書きであり、用法を正式に記入するのは煩雑であったからと考えられるが、調剤過誤防止のため、災害時でも確認すべきである。被災地の薬局は、調剤が可能である限り、医療支援チームと連携を図って災害用処方箋に対応すべきである。一方、手書きによる煩雑さや記入ミスを減らすため、災害用処方箋の記入方法にも改善の余地があると考えられる。統一された災害用処方箋が全国規模で医療関係者に周知されれば、災害時にスムーズに調剤できるようになり、処方箋不備による疑義照会が減ると期待できる。 |